2017年6月28日水曜日

なぜ今、チェルノブイリ法日本版条例の制定なのか--チェルノブイリ法日本版その可能性の中心--(5)原発事故の2度目の事故

4、「人間と人間との関係」の中で発生した2度目の原発事故

 先ほど、「人間と自然との関係」の中で発生した1度目の事故が過酷であればあるほど、「人間と人間との関係」の中で発生する2度目の事故もまたし烈で過酷なものになると言いました。福島原発事故の1度目の事故は先ほど述べたように、チェルノブイリ事故に劣らず、過酷なもので、しかも今なお収束できずにいす。その結果、福島原発事故の2度目の事故も1度目の事故の過酷さに匹敵して、前例をみないほどし烈で過酷なものとなりました。


 つまり、2度目の事故とは要約すれば次の3つです――「情報を隠すこと」「事故を小さく見せること」「様々な基準値を上げること」。

 チェルノブイリ事故の2度目の事故は、
事故直後、ソ連政府は①高濃度汚染のベラルーシ・ゴメリの情報を報告書から消去(情報の隠蔽)、②.安定ヨウ素剤を配布せず、③.住民の被ばく基準を百倍に引き上げました(基準値の引き上げ)。

 これに対し、311直後、学習済みの日本政府はすみやかに①稼動中のSPEEDIの情報を公開せず、②.安定ヨウ素剤を配布せず(服用を止めさせ)、③福島県の学校の安全基準を20倍に引き上げました。その結果、「原発から二十キロ圏」内の避難区域の拡大防止が実現し、小児甲状腺がんの発症ゼロ(チェルノブイリ事故の時服用したポーランドの結果)と正反対の結果が実現し、
チェルノブイリ事故の時52万人余が学童疎開したキエフ市のリピート防止が実現しました。

 これらの2度目の事故は311直後に限りませんでした。福島県の学校の安全基準20倍引き上げに抗議して、福島の子どもたちを安全な場所に避難させ、教育をせよを求めた2011年6月の「ふくしま集団疎開裁判」の提訴も日本のマスコミに無視され、唯一、特集を組んで報道したTBSのNEWS23のキャスターはその後、降板となりました。この裁判に対し、福島地裁郡山支部は2011年12月、野田前首相の「収束宣言」と同日のほぼ同時刻頃、「100ミリシーベルトまでは避難の必要がない」という判決を下し、弁護団は次の抗議を表明しました。

《「子どもを粗末にするような国は滅びる、そのような国には未来はない」
これが真実であることの確認を求め、混乱と異常事態に陥っている国政の是正を「人権の最後の砦」を本来の任務とする裁判所に求めたのが疎開裁判です。
 しかし、本日、裁判所は自らその任務を放棄することを宣言しました。福島第一原発に劣らず、我が国の三権も首をそろえて混乱と異常事態に陥っていることを余すところなく証明しました。それが本日の決定の唯一の意義です。
 これに対しては、私たちは2世紀以上前のアメリカ独立革命の人権宣言の初心に返って、「子どもを粗末にするような国は廃炉にするしかない。未来は子どもを大切にする国作りの中にしかない」ことを宣言する。


政府は人民、国家または社会の利益、保護および安全のために樹立される。いかなる政府も、これらの目的に反するか、または不十分であると認められた場合には、社会の多数の者は、その政府を改良し、変改し、または廃止する権利、いわゆる革命権を有する。この権利は、疑う余地のない、人に譲ることのできない、また棄てることもできないものである。」(米国ヴァージニア憲法3条)》

 しかし、この抗議の記者会見を日本のマスコミは報道せず、そのため日本人は誰も知らず、ひとり韓国KBSが特集番組を組み、多くの韓国民は日本で悲劇の進行を知ったのです。それは、先頃、「福島の事故が、原発が安全でも安くもないことを明白に示している」と語り、脱原発宣言を行った韓国の文大統領にも「福島原発事故の真実」を語る情報の1つとして届いていると思います。

 その上、2017年3月、福島県民健康調査の甲状腺検査で二次検査(精密検査)を受けた結果、治療(手術等)が必要とされない者は「経過観察」とされる扱いだが、約2500人いる「経過観察」中の子に甲状腺がんと判明しても、県民健康調査のデータとして公表しなかった事実が判明しました(この問題を取り上げた子ども脱被ばく裁判の原告準備書面33参照)。しかし、6月に開催した福島県民健康調査の検討委員会でも、検討中として公表されないままです。

 このように、子どもたちを粗末にする政府は廃炉にするしかありません。

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